色眼鏡レポート

虹彩がこうなんだから仕方ないとこある

今一杯をこの夜の下で

運命すらないわ

 

 『出会い』とは、人が夢を見る運命だ。

 

この時勢になる前から、バーであるとか、そういった未知と出会う機会が訪れるだろう可能性の塊に立ち寄らなくなってしまった。

『出会い』、しかもその頭に運命の、がつくようなものなど、本当にあるのだろうか。

缶チューハイをあおり、ブルーライトに眉をしかめる。つないだイヤホンからはJAZZ音源を適当に流している。ピアノの、角のないまろいソロを鼓膜で受け止めながら、『出会い』という名の夢を、寝ないながらに見ようとしている。

 

 かなりのロマンチストであることは自覚している。運命の出会いの存在を信じている、ただそれだけでじゅうぶんだろう。まあ、四半世紀と少しを生きながら、それが都市伝説クラスで自分の身には縁がないことをしっている。まず人間のことがきらいなのに、何に出会いたいのか。

 

 足元からの冷えが正気に引っ張ってくれる。寒波が強い風によって世を寒さで塗り潰していく今夜。私はビャンビャン麺を食べ、青い色をしたチューハイで渇きをなだめた。

外もきっと、今夜は青い。そうあればいいと思った。

じゃあ乾杯。

 

 

口内炎と同居する時

 人間は、人間の体の一部の味を知っている。

 

 不摂生で口内炎はじめとしたデキモノ、潰した時に体液だったものや血液、皮膚の一部を口にしてしまう時があるかと思う。

それらを人間の体だと言ってしまえば、簡易人体食の完成だと思っている。

 

まあ、そんな旨味も栄養もない話は置いておいて。

 

 口内炎と言っても、怪我らしからぬかわいいものから、らしさの塊かわいくないものまで、様々な度合いがある。

直近家人の口内に現れたものは、下唇のすぐ裏側、下顎を動かす度に接触する箇所に大きなカルデラ状になって出来上がっていた。いわゆる、かわいくないタイプだ。

 かわいくなくても、しばしの間同居人となる口内炎、意識すればするほど存在と被害が拡大する。

安易にビタミンをとれば治るわけでもなく、意識の外に持っていくことで、なぜか自然治癒の働きを感じられる。

いやな存在だ。

 

 このように口内炎に思い耽る夜、私の口内はというと。

歯で細かく千切られた下唇裏がザラリとする。朝になればきっと、無い口内炎に思案していたことすら忘れ、またザラリとした部分に舌を押し当てるのだろう。

 

夜が更けていく。

 

偏見まみれだこんなん

 

「わあ! あの人絶対......や!」

 

この定型文が頭に浮かぶ場面が多い日常。特に仕事中なのですが。

 

この定型文の数秒後に別の自分が脳内に踏み込んできて、

「なんやその偏見」

と一言、その後チョップを一発。

 

四半世紀とちょっと生きると脳内に何人も自分の側面を飼うことがあるかと思う。

日常を眺める視界という窓を最前列で眺める自分。そいつがおそらく、もっとも発言が多いのだ。そんな自分が偏見まみれなのだ。許せん。

 

許せないので、脳内窓の最前列自分にチョップを入れてくれる自分を、ちょっとマッチョにしてやる。

 

痛い目を見ような、脳内窓の最前列自分。あわよくば偏見から足を洗ってくれ。