今一杯をこの夜の下で
運命すらないわ
『出会い』とは、人が夢を見る運命だ。
この時勢になる前から、バーであるとか、そういった未知と出会う機会が訪れるだろう可能性の塊に立ち寄らなくなってしまった。
『出会い』、しかもその頭に運命の、がつくようなものなど、本当にあるのだろうか。
缶チューハイをあおり、ブルーライトに眉をしかめる。つないだイヤホンからはJAZZ音源を適当に流している。ピアノの、角のないまろいソロを鼓膜で受け止めながら、『出会い』という名の夢を、寝ないながらに見ようとしている。
かなりのロマンチストであることは自覚している。運命の出会いの存在を信じている、ただそれだけでじゅうぶんだろう。まあ、四半世紀と少しを生きながら、それが都市伝説クラスで自分の身には縁がないことをしっている。まず人間のことがきらいなのに、何に出会いたいのか。
足元からの冷えが正気に引っ張ってくれる。寒波が強い風によって世を寒さで塗り潰していく今夜。私はビャンビャン麺を食べ、青い色をしたチューハイで渇きをなだめた。
外もきっと、今夜は青い。そうあればいいと思った。
じゃあ乾杯。
ゑ