口内炎と同居する時
人間は、人間の体の一部の味を知っている。
不摂生で口内炎はじめとしたデキモノ、潰した時に体液だったものや血液、皮膚の一部を口にしてしまう時があるかと思う。
それらを人間の体だと言ってしまえば、簡易人体食の完成だと思っている。
まあ、そんな旨味も栄養もない話は置いておいて。
口内炎と言っても、怪我らしからぬかわいいものから、らしさの塊かわいくないものまで、様々な度合いがある。
直近家人の口内に現れたものは、下唇のすぐ裏側、下顎を動かす度に接触する箇所に大きなカルデラ状になって出来上がっていた。いわゆる、かわいくないタイプだ。
かわいくなくても、しばしの間同居人となる口内炎、意識すればするほど存在と被害が拡大する。
安易にビタミンをとれば治るわけでもなく、意識の外に持っていくことで、なぜか自然治癒の働きを感じられる。
いやな存在だ。
このように口内炎に思い耽る夜、私の口内はというと。
歯で細かく千切られた下唇裏がザラリとする。朝になればきっと、無い口内炎に思案していたことすら忘れ、またザラリとした部分に舌を押し当てるのだろう。
夜が更けていく。
ゑ